小さなお子様と大きなゴリラの誤飲には気をつけましょう

ゴリラも少なくとも2歳くらいの知能はあるというお話が出ましたが、人間の子供だと何でも口に入れてお母さんを困らせてしまう年頃です。まだ手が上手に使えないので、何でも口に入れて感触を確かめているそうですが、ゴリラはどうなのでしょうか?

1985年7月6日、カレン・ガリネッティ (Karen Gallinetti) がマイケルにねんどのかけらを渡したところ…

マイケル: ねんど (Clay)
カレン: あなたのはどこなの?
マイケル: もっと ねんど (More clay)
カレン: そうね、私があげたねんどはどこなの?
マイケル: ごめんなさい おなか (Sorry stomach)
カレン: なんでそんなところに?
マイケル: 失礼だ ごめんなさい (Insult sorry)
カレン: なんで?
マイケル: ゴリラ ねんどの サンドイッチ、ねんど もう一度 おねがい (Gorilla clay sandwich, clay again please)

…まんまお子様ですね!ねんどのサンドイッチを作って遊んでいたら本当に食べちゃったとか、みなさんもやってますよね?

さらに、人間の子供はいたずらをして、しかっても口ごたえをしてお母さんを困らせる年頃になってきます。ゴリラも手話で口ごたえを…。

1985年7月19日、またもやカレンさんとです。マイケルは、自分の部屋の壁のボルトを引き抜くことに成功したそうです。

カレン: あなたボルトに何をしたの?
マイケル: 古い 私の 歯 ゴリラ (Old my teeth gorilla)
カレン: なんですって?
マイケル: ごめんなさい 食べた (Sorry eat)
カレン: なんでそんなにいやな子なの?
マイケル: いやなの いやなの おまえが 食べろ (Obnoxious obnoxious you eat)

…まんまお子様ですよ!人間の子供は成長するとこういうことはしなくなりますが、ずっとお子様くらいの知能のゴリラは…ずっとこのままなのでしょうか!?
参照:
Gorilla Journal, Vol23, No.1

ゴリラも箱と棒を使って天井のバナナが取れるか

2014年01月29日 , コメント 0件 , ゴリラの知能
箱と棒で天井のバナナを取るチンパンジーの話が出たので、ついでにゴリラが同じことができるかというお話です!

ココのいる The Gorilla Foundation (ゴリラ財団、ゴリラ基金) の助手リック・マーフィー (Rick Murphy) さんがココとンドゥメの頭を刺激するために「ゴリラ・パズル」と称して屋外で同じようなことを行ったそうです。

最初は手の届く高さから、だんだんと引き上げていったところ、ココの方が賢かったようで、手の届かない高さの野菜のバッグを見て、すぐに屋外のがらくたを持ってきてその上に乗ったそうです。ンドゥメはジャンプして取ろうとする肉体派だったみたいですが、ココのやってることを見て真似し始めたのだとか。

さらに台の上に乗っても届かない高さにすると…

Koko_stick_in_hand_on_the_ball.jpg
©2003 The Gorilla Foundation/Koko.org, Photographer: Rick Murphy

ちょっと写真が小さくて見づらいですが、ココはこのように複数のがらくたを組み合わせてタワーにし、左手に持っているように棒を使い始めたそうです!チンパンどもにおくれをとらないゴリラの矜持を見せてくれました!

が、ンドゥメくんはココを見てやり方を学ぶどころか、ココちゃんが棒で叩き落した野菜のバッグを横からかすめとることを覚えたそうです…!するとココも対抗して、野菜のバッグをそっとひっぱりよせるようになったのだとか。

たなぼたを狙えなくなったンドゥメくん、自分でもタワーを作るところまでは真似できたものの、棒を使うところまでは考えつかなかったらしく、

ンドゥメはバッグをしばらく注意深く見つめ、その後立ち上がって手を届かせようとした。が、うまくいかなかった。遠すぎたのだ。すると、彼はバッグの下に座り、突然宙に飛び上がり、ジャンプした高さにあるバッグをつかもうとしたが、失敗してしまった。不屈の精神で、ンドゥメは二回目の発射を行い、それを取った。


Ndume_jumps.jpg
©2003 The Gorilla Foundation/Koko.org, Photographer: Rick Murphy

あくまでも肉体派のようです…!横に張られたロープを片手でつかみながら、さらに高くジャンプすることも覚えたみたいですが、頭はココちゃんの方がいいですね…!

その後、野菜のバッグをひもで滑車のようにおもちゃのボールとつなぎ、ボールを引くと野菜が動くのを見せたそうです。ココはしばらくどういう仕組みなのか見つめたあと、原理が分かったようで強くボールをひっぱってひもを引きちぎり、落ちてくる野菜をゲットしたそうです。

この知能訓練を通じて、ゴリラたちは、問題を解決するための論理的な「もし〜なら」の因果的連鎖を学んだ。

一部は力まかせと呼ぶのじゃないかという気もしないでもないですが、そういうことだそうです。

後に、ココちゃんに「猿人間」を聴かせたセレナ・ローズ (Serena Rose) さんも加わり、食品用エレベーターのようなものを作って、ボールをひっぱることで水差しを持ち上げる遊びも始めたそうです。ンドゥメが下で見ているのを尻目に、ココはすぐ原理を理解して水を飲めたのだとか。ンドゥメも筋肉だけじゃどうにもならないことがあるのを学べたんだと思います。
カテゴリ: ゴリラの知能

手話ゴリラ・ココは本当に会話ができる - その8 やっぱり本当は話せないらしいですよ

前回からの続きで、ゴリラのココは話せないという批判に対する反論への反論です。ややこしいですね!あと、前回もご説明したとおり誰かの直接の反論の反論ではなくて、なんとなくいろんな話を読んでるとこういうことじゃないかという私のうわごとです。ちゃんとしたお話は京都大学の先生とかに聞いてみてくださいね!

ちょっとおさらいすると、ずっと人間の赤ちゃんとゴリラやチンパンジーなどの類人猿の認知 (cognition)、つまり心の働きを比較して、少なくとも2歳児前後の心の働きに近いものはあるので、話せるのだというような論旨を展開してきました。あとは、人間の子供の初期の言葉に似ている、という主張もありました。

とは言うものの、ハーバート・テラスが言うように、

もし子供が、一番優秀なチンパンジーがやっていることをそのままやっていたら、その子供は発達障害だと考えられるだろう。

たくさんの似ている点があっても、たくさんの決定的な違いもあるです。

たとえば、まだ言葉を話せない人間の赤ちゃんにバイバイと手をふると、赤ちゃんも真似をしてバイバイと手をふり返します。赤ちゃんに向かってボールを転がすと、真似をしてこちらにボールを転がします。これらは類人猿も真似ができるとはいえ、教えられない限りやらないのだそうです。同じように見える模倣行動ですが、決定的な違いがあるのです。どういう意味があるのか、はっきりはしませんが、お互いに言葉を伝えるという会話と何か関係があるのかもしれません。

また、言葉を話せない人間の赤ちゃんも類人猿も、何か興味のある物に指をさします。しかし決定的な違いは、赤ちゃんは存在しない物、たとえば以前はそこにあったけど今はもうない物に対しても指をさすのです。これもどういう意味があるのかはっきりはしませんが、言葉の主要な特徴のひとつ、時間と空間を超越できることに関係があるのかもしれません。

そして、言葉を話すとされた類人猿には言えないこともあります。たとえば再帰です。「こんにちはと私が言ったと彼が言ったと私が言ったと彼が…」のように入れ子になった文です。「世界で一番長い文の作り方を教えてやろうか?」と子供に教えると「ずーるーいー!」と言われそうですが、子供でも分かるこの仕組みは類人猿にどんなに教え込んでも理解できないことなのです。

そして、子供は言葉を覚えると「どちて坊や」になります。あれなに?あれなんの音?パパはいつ帰るの?犬はどこ?などなど、大人からすればどうでもいいことを質問しまくるようになります。が、類人猿はこういう質問をしません。いつもあげているご飯がもらえないときに、「ご飯は?」と聞くくらいしかしません。これも人間の子供と類人猿の決定的な違いのひとつです。

そこで、類人猿と人間の子供の心の働きは似ているところもあるけど、決定的な違いもあるよね。ひょっとして、これが類人猿が言葉を話せない理由なんじゃないの?と考えたのが、以前ちょこっとだけ名前の出た話すチンパンジー、ラナちゃんの育ての親デビッド・プレマック (David Premack) です。

なぜそんな大事な発見をしたチンパンジーを取り上げないんだ!とお思いかもしれませんが、ぶっちゃけあんまり面白いこと言っていないんです!「バナナはバナナである」「リンゴはバナナではない」みたいなことしか言ってなくて、ココの「苦労のない穴にさようなら」とか「人は礼儀正しくあれ、人は徳を持て」のインパクトの前ではかすんでしまうのですよ!

というわけで、プレマックさんが提唱したのが「心の理論」です。人間の自閉症とか発達障害の解説などにも使われるので、聞いたことのある方もいらっしゃると思います。サリーが隠した人形をアンが…みたいな話です。というか、チンパンジーに言葉を教える研究の成果が人間の自閉症や発達障害の研究に役立っていたのがびっくりですよ!

これはサポルスキーも言ってるとおり、言葉というのはただの音や単語の組み合わせではなく、認知、つまり心の働きそのものだということと関係があります。テラスが指摘した文法の欠如も、つまるところそういう心の働きの欠如だったのです。再帰ができないのも、そういう心の働きがないからです。

で、類人猿にはどんな心の働きが欠けていて、それが欠けているとなぜ話せないのか…はとても長い話になるのですが、言語学者のジェフリー・プラム (Geoffrey K. Pullum) が身も蓋もないけど分かりやすい説明をしていました。

テラスが記すように、問題は心の理論の欠如だ: チンパンジーたちがわれわれに何も言わない理由は、ただ彼らが特に言いたいことがないからではない。彼らはわれわれに脳みそがあって、彼らのことを理解するかもしれないという発想がまったくないからだ。

そんなわけで、これがテラスの発見とともに類人猿に言葉を教えようとするあらゆるプロジェクトを葬り去りました。というか、類人猿に限らずオウムやイルカ、その他話すとされた全ての動物は本当は話せないという理由にもなりました。以前の結論どおり、言葉は教えてどうにかなる問題ではなくて、たとえドラえもんの「ほんやくコンニャク」を食べさせたとしても、彼らは話せないということが分かったのです。

つまるところ、類人猿たちは高い知能で覚えた手話で自分の考えを伝えていたのではなく、ご褒美をもらおうとしていただけとなります。前述のプラムさんは、それを身も蓋もなく「ただの物乞いの達人」だと評しています。

というわけで、類人猿に言葉を教える研究は、次のステージに移りました。テラスも今はこちらに移りました。類人猿の心の働きを知ろうとする研究です。そして、類人猿に手話を教える代わりに、わけのわからない実験が始まりました。

たとえば、天井にバナナをつるして、チンパンジーが箱と棒でそのバナナが取れるかという実験は有名ですが、その棒を隠してしまってバナナが取れないとチンパンジーを悩ませる実験になりました。その棒を別のチンパンジーに見せたとき「おーい、ここに棒があるよ、これ使ったら?」と教えるかどうかを調べるのです。

あとは、鍵のついた箱の中に食べ物を入れ、その鍵をチンパンジーに見せつつ隠してしまい、あとで人間が箱を開けようと必死になっているのをチンパンジーが見たら、「あー、鍵ならそこにあるよ」と教えるかどうかを調べたりしています。もう実験なんだか遊んでるんだか分からないレベルです。

で、その過程でいろいろ分かってきました。チンパンジーにもわりと複雑な心の働きはあるけど、競争のために進化したと思われる心の働きで、逆に人間の心の働きは助け合うために進化したようだ。それが言葉を生み出すことにつながったのではないか、というような仮説も出てきました。ゴリラが話せなかったのは残念ですけど、ちょっといい話にもつながっていたのでよしとしましょう!

それに、類人猿たちは言葉は話さないとしても、子猫をかわいがるようなやさしい心を持つことには変わりはないのですよ!チンパンジーのニム・チンプスキーも猫が好きだったそうですし!でもニムはプードルを死ぬまで壁に叩きつけて殺してますけどね!過剰なシンパシーは彼らのことを見誤まるだけです!でも、ココがかわいいのも事実です!

そんなわけで、大変残念なことなのですが、就活の面接などで「きみ、あのゴリラは本当に話していると思うかね」と聞かれたら、「話しているように見えるのは錯覚 (実験者効果) で、そもそも心の働き (認知、心の理論) の違いで話すことはできないのです」と答えておくと無難かと思います。さらに、「話しているように思えるのは、それが話すわたしたち人間の心の働きだからです」と申し添えておくと好印象なのではないでしょうか。
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