ゴリラのココは本当に手話で会話ができるのか - その1 神話の終焉

…そして、そして手話に関しては全ての類人猿の中でも極めつけの類人猿がやってきた。ココ、ゴリラのココだ。
ロバート・サポルスキー (Robert Sapolsky)

95の英単語と文を理解できたグア (Gua)、4つの言葉を口にできたヴィキ (Viki)、350の手話ができたワショー (Washoe)、その他大勢の何かしら言葉を覚えた類人猿たちの中から、1,000語の手話と2,000英単語のヒアリングという圧倒的な語彙数と理解力を掲げて登場したココ。

ジョークを言って、嘘をついて、悪口を言って、死生観を語って、人生の意味に答えて…ありとあらゆることを話したココの活躍は、これまでご紹介してきたとおりです。そして、前夜の夢や目撃したけんか、母の死についても語ったマイケルの活躍も忘れてはいけませんよね!

ココはナショナルジオグラフィック誌の表紙をかざり、テレビドキュメンタリーにも取り上げられ、全米で一躍ときの人…というか、ときのゴリラになります。

…これは驚くべきことだった。ココこそが一番だった。

突然、本当に突然ココはマドンナとダブルデートをしてダンスキンスを推奨してエアロビ運動ココのダイエット法みたいな…とにかくすごかった。

これがかつてない最高のゴリラで最高の類人猿で、彼らはココをはらませるためのオスを連れてきて、赤ちゃんを産んで手話を教えられるようにして、複数世代のゴリラが子供に哲学を教えて…こいつはすごい!

そして1980年頃、すべてが破滅した。コロンビア大学のハーバート・テラスによって破滅した。
ロバート・サポルスキー (Robert Sapolsky)

マドンナからのくだりは実際の出来事ではないでしょうが、アメリカでは有名になるとスキャンダル起こしてテレビコマーシャルに出てダイエット本を出すのが定番コースなのでしょうか?

とにかく、心理学者のハーバート・テラス (Herbert S. Terrace) が究極の類人猿、ココを破滅させたようですが、この人は何をしたのでしょう。

話は少しさかのぼりますが、この時代、人間はどうやって言葉を覚えるのかについて二大陣営の大論争がありました。ひとりは心理学者のスキナー (B.F. Skinner)、ひとりは言語学者のノーム・チョムスキー (Noam Chomsky) です。

スキナーは言葉はご褒美をもらって覚えると唱えました。幼児が「ご飯をちょうだい」と言えればご飯をもらえますが、「ダーダーダー」としか言えなかったらご飯はもらえません。幼児は聞いた様々な言葉をデタラメに話し、それが文として正しければ良い結果につながるので正しい言葉を覚えて行くという考え方です。

チョムスキーは言葉は人間だけの生まれつきの能力だと唱えました。幼児を観察すると、これまでに聞いたことのないはずの文を話すことがあり、子供は聞くよりもはるかに多くの言葉を話していました。これは頭の中に言葉を話すための仕組みを生まれつき持っているからだと考えました。

どちらが正しいのでしょうか。手話は口で話す言葉と比べても全く遜色のない「完全な言語」ですので、手話で会話のできるチンパンジーのワショーやゴリラのココといった人間ではない動物がいるということは、スキナーの言うことに分がありそうです。

ハーバート・テラスは厳密な実験的手法でそれを証明し、ノーム・チョムスキーに反駁すべく、彼の名をもじってニム・チンプスキー (Nim Chimpsky) と名づけたチンパンジーに手話を教えました。そして、その結果やいかに?

なんとニムはチンパンジーは言葉を理解できないという結論を出してしまいました。テラスはテレビのインタビューに答えて言っています。

プロジェクト・ニムの主なゴールは、チンパンジーが文を作れるかということだった。私は、残念ながら、その答えは「No」であると結論づけた。
ハーバート・テラス (Herbert S. Terrace)

んー?おたくのチンパンジーは上手く話せなかったわけね?手話を教えるのに失敗したの?それがゴリラのココさんと何の関係があるわけ?

しかし彼の実験結果はゴリラのココだけでなく、全ての話すとされた類人猿を巻き込んでの大論争を引き起こしました。


この記事へのコメント
  1. お名前: ななしのゴリラさん 投稿日:2015年01月01日 00:44
  2. あけましておめでとうございます!
    ビールを飲みながら紅白を観ていて変なこと思い出しました!
    お時間あればご教示頂くと幸いです!

    >この時代、人間はどうやって言葉を覚えるのかについて二大陣営の大論争がありました。
    >スキナーは言葉はご褒美をもらって覚えると唱えました。
    >チョムスキーは言葉は人間だけの生まれつきの能力だと唱えました。

    これって、そもそもどのように2大陣営にまとまったんでしょうね?!
    チョムスキーの「人間だけの」生まれつきの能力というあたりに引っかかってます。
    何らかのキリスト教的文化背景が無いと、科学の方法論でもこの2つにまとめて、それから切り分けする進み方に至らないんじゃないかと…

    日本人だと「動物にも感情があるんですヨー!」て言われると、「はぁ、そうですか…(この人は何言ってるのか?)」とか、線引き難しい気がするんですよ。
    何言ってるかわけわかんなかったらスミマセン
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