ゴリラのココは本当に手話で会話ができるのか - その3 自白か誘導尋問か


女性: 何の時間、今は? (What time now?)
ワショー: 食べる。時間だ、食べる。(Eat. Time eat.)

上記動画の3:00頃から始まる女性とチンパンジーのワショーとの会話です。きちんとお話できるじゃない!と思いきや、テラスは指摘しています。
  • 映像では翻訳されていないが、ワショーは実際には手話で「時間だ、食べる。時間だ、食べる (Time eat. Time eat.)」と言っていて、女性が「時間」と言った直後に割り込んで手話を始めている。
  • 話し相手の女性はこの10秒ほど前に「私に食べさせて。もっと私に。(Eat me. More me.)」と言っている。

ということはつまり、ワショーは「何の」という問いかけの手話が来たので何か答えようとした。続いてやってきた「時間」という手話に触発されて真似を始め、直前に話し相手がした「食べる」を組み合わせて手話しているだけだ。自分で考えた何かを話しているわけではないと言います。

…ん?でも9:32からの映像を見てよ。カップに入った人形を見せられて、ワショーは言ってるよ?

女性: これは何? (What that?)
ワショー: 私の 飲み物の 中の 赤ちゃん。 (Baby in my drink.)

見せられたものを、きちんと説明できているよね?直前に出た手話を猿真似してるだけじゃ、こんなに的確に物事を表現できないでしょ?

しかし、テラスはやはりこれもワショーが自分で考えた何かを話しているわけではないと言います。それが以下の図です。

BabyInMyDrink.jpg

これも映像では翻訳されていませんが、ワショーが一言手話するたびに話し相手の女性が「これ」「これ」「これ」と順番に答えるべきものを指差しています。ワショーはカップの中に入った人形を見て自分の考えを伝えたのではなく、指示されたものを順番に手話しただけだとテラスは指摘しています。

つまり手話で話すとされた類人猿たちは、自発的に何か自分の考えを話しているわけではなく直前の話し相手の手話を真似たりそれをきっかけにして他のなんらかの手話と組み合わせたり話し相手の指示に誘導されたりしているだけだとテラスは考えました。

それらをふまえて以前ご紹介したココの動画も注意深く見てみると、興味深いかと思います。例えばビデオデート。公式サイトの動画だけでは分からないものの YouTube 版のものと見比べてみると、ココが「ゴリラ 訪問」と手話する直前にパターソンは「ゴリラ」と手話しています。そしてココが「私は 彼」と手話する前に、パターソンは画面を指差して「彼」「彼」とやっていたりします。


この記事へのコメント
  1. お名前: 元教科書編集者さん 投稿日:2014年07月05日 22:14
  2. 続きです。ガードナー夫妻の研究に対し、20世紀はじめの算数ができるクレバー・ハンスという馬のケースと同じじゃないかという批判が起きました。まさにこの動画と同じです。その後は場面や状況に依存しない統御された実験(プレマックや京大のアイ・プロジェクトのような)が主流になりました。こうした批判や手話が誤解される恐れがあるなどの理由で、結局教材化はなりませんでした。しかし、「猿の惑星 創世記」のような言語を獲得した霊長類という夢には今でも惹かれます。
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