ゴリラのココは本当に手話で会話ができるのか - その10 バトルロワイヤルの行方

ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス誌にはテラスも反論を寄稿し、パターソンもまた反論し、人類学者ワッシュバーン (Sherwood Washburn) も参戦して大脳生理学からの知見を述べたと思ったら、マッチメイカーのマーチンがそれに反論。もう誰が誰をなんで批判してるのか、わけが分からなくなってきました

話す類人猿の研究者サベージ・ランボーですら、ココにしゃれとか死の概念の知識があるとか信じられん、パターソンはテストの方法がおかしいと自著で批判する始末。ありとあらゆる分野の人がありとあらゆる主張をして、論争はバトルロワイヤルの様相を呈してきました。そして、勝負の行方はいかに?

何度となくお世話になっているサポルスキー先生によると、このしっちゃかめっちゃかの余波で、話す類人猿の研究分野全体が衰退してしまった、とのことです。そして、最後に立っていた者は…

この余波の残滓の中に、一匹のチンパンジーが残った。私が思うに、われわれが大体において何か真の言語に似たものを使っているとみなすことができる、カンジという名のボノボ・チンパンジーだ。

…なんと…ジャッジ・サポルスキーによるとココは敗者のようですね。以前にもお話したとおり、彼はココに話す能力があるとは微塵も思っていません

僭越ながら私の判定としては、大好きなココちゃんにしたいところですが、この30年間のさまざまな研究の進歩は、判定材料に暗い影を落とします。

不幸な子供たちが、人は生まれながら話す能力があることを示しました。教育を受けられず手話も知らなかったニカラグアの聾唖の子供たちは、一箇所に集められているわずかな時間の間に、彼らだけの手話で話し出し、世界で一番新しい言語ニカラグア手話を誕生させました。生まれて間もなく地下室に閉じ込められ、誰からも言葉を教わることなく育った双子は、救出されたときにはお互いをポトとカベンゴと呼び、二人にしか分からない言語で話をしていました。

この能力は、鳥が生まれながらに飛べる仕組み、魚が生まれながらに泳げる仕組みと同じく、人だけの仕組みだと分かってきました。知的障害の一種、ウィリアムス症候群の子供は非常に流暢で多弁に、しかし意味のないことを話します。脳に言葉を理解し話すための専門の部分があることを示しています。CTスキャンは、それがどこなのかまではっきりと見せてくれます。もう、言葉は教えてどうにかなる問題ではなくなってきました

でも動物は言葉を話せないだけで、本当はいろいろ考えているんじゃないか、伝えられないだけじゃないのか、という最後の希望にも、最新の哲学と未開の部族の研究が否定的な知見を与えてくれます。

哲学まで敵なのかよ…。私はただ、ココちゃんがどんなことを話しているか知りたかっただけなのに、なんでこんなことに…。唯一の明るい材料と言えば、論争も研究もまだ細々とは言え続いていて、形勢逆転の可能性もなくはないことです。

とまれ、かけあしで見てきましたが、パターソン博士とココを中心に繰り広げられた論争は以上です。論戦に加わった人たちの言っていることは、個別に詳細に見ていくとどれも非常に興味深くて面白い話なのですが、きりがないので一部の人の一部の主張しかご紹介できなかったのが残念です。いつか、別記事で書く機会があればと思っています。そして、みなさんの判定材料になればと思います。


この記事へのコメント
  1. お名前: ななしのゴリラさん 投稿日:2014年06月28日 21:13
  2. ほんとおにしゅわでかいわできるのかとおもいました。ここはしゅわでかいわできないのでしゅわでかいわをできるようにしてくれるようにしてほしいなとおもいます。これからもここにしゅわできるようにしてくれな。
  3. お名前: ななしのゴリラさん 投稿日:2018年05月21日 08:13
  4. もう4年前の記事だったのですね、とても興味深い内容で、自分でも色々と調べてみたいという気持ちになりました。動画などを見て、ココちゃんは手話ができて死生観まではっきりしていてすごい!と純粋に感動していただけにちょっとショックでもありましたが、それ以上にわたしが今まで知りもしなかった人間と言葉の関係について書いてあったり、メモをとりながらとても面白く読ませていただきました!ありがとうございました。
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