ハーバート・テラスという人 (4/5) - 彼自身の主張

『実際の研究を始め、管理し、本を書いた人物として、私はシンガー (訳注: 映画の内容をもとにテラスを批判した哲学者) の読者とマーシュ (訳注: プロジェクト・ニムの監督) の観客に、より客観的に何が真実で虚偽か判断できるように、より詳しく釣り合いの取れたものの見方による利益を得て欲しい。』

映画「プロジェクト・ニム」では笑顔と涙を武器に語る人物の悪行を転嫁され、当時の動物実験の問題を現代の感覚で非難され、バイアスのかかった編集ですっかり悪役となってしまったハーバート・テラス。彼の言うとおり、判断材料となるよう彼の主張をご紹介したいと思います。

まずは、なぜこの実験を始めたのかです。

『1960年代から1970年代の「類人猿言語戦争 (ape language wars)」の間、何人かの心理学者たちは類人猿が簡単な文法的言語を学べるかを断定しようとした。1969年、アレンとベアトリクス・ガードナーは、彼らが育て、表向きはアメリカ手話を教えたとするチンパンジーのワショーが、初めて白鳥を見て「水鳥 (water bird)」のような手話の順序の組み合わせを生み出したと報告した。

興味深いことではあるものの、ガードナーたちの研究は大部分がいくつかの魅惑的な逸話に等しく、厳密に調査した科学的データの収集ではなかった。彼らは「水鳥」が起こった状況だけをとらえていたにすぎないのか。それとも他のたくさんの例、人間の言語の構造への理解の鍵となる言語学的に決定的な形容詞 + 名詞の単語の構築をとらえていたのか。』

すでにご紹介した、類人猿は話すと主張するほとんどの研究者に共通する客観的なデータの欠如ですね。ゴリラのココちゃんもですよ…。実験の経過と結果も、これまでにご紹介したとおりですので省略します。

そして、プロジェクト・ニムのマーシュ監督とそれを見て義憤にかられた観客を代弁するシンガーに対して、おそらく悪役テラスが映画の中では主張を許されなかったことを述べます。

『1979年の11月、私は結果をサイエンス誌で公開した。彼らの信ずるところにおいて、編集者たちはマーシュのプロジェクト・ニムやシンガーのレビューは把握することに失敗したことを理解していたのだ ── 影響が重大な否定的結果はしばしば科学的研究で生じることだが、その価値を減少させることはない。マーシュとシンガーは反対の視点を取る。彼らは、否定的な結果は明白な失敗と等しいと信じているのだ。研究者たちの道徳と動機に、ほとんど邪悪な言外の含みをもって。私はまったく同意できない。

私が30年以上前にサイエンス誌で公開した仮説は、いまだに真実を保持している。そして、どの手話をするチンパンジーであっても、人間と両方が映像のコマの中に入った1時間の無編集のビデオテープを見れば、誰でも確認することができる。ビデオは、訓練者がチンパンジーの手話を促し、そして / または、手話をさせ続ける動機づけに、ちょっとしたご褒美をあげていることを暴露するだろう。いまだにこの結論に疑問を呈したものはいない。

そして、シンガー (と観客) が非難する、なぜ「手話で話せる」ニムを霊長類研究所に送り返してひどい目にあわせたのかについてです。

『この質問には驚かされる。シンガーは実際にはニムが言葉を使えて、だから私が手話をしない類人猿の群れの中に送り返したのだ、と信じているのか。彼を残りの「無学」な個体群の中に混ぜ込んで、彼の才能が発見されることのないようにと。

シンガーは本当に、私がニムに特別なことは何もないと私の発見を間違った解釈をし、そして私が得られたであろう認識を見合わせて、その反対を告知したと思っているのだろうか?』

翻訳が下手で分かりにくくて申し訳ないんですが、「ニムが本当に話せたのなら、そんなすごいことはそう報告してるよ」という意味です。これはすでにお話しているとおり、スキナー派の彼にとっても望ましい結論のはずでした。

この後、前回もお話したように、マーシュは映画を売るためにヒーローのニムと悪役のテラスのストーリーを仕立て上げたのだと指摘し、最後にこう結んでいます。

『チンパンジーの研究と動物の幸福に関心のある全ての人々のために、ニムのプロジェクトの話と彼の貴重な手助けによって学べたことは、科学と事実によるもっと優れたプロフェッショナルな関心によってシンガーとマーシュにより考察、公開されるべきであった。その代わりに、彼らはニムの話を一方で表面的で選択的な分析と、もう一方で表面的で挑発的な映画製作により汚したのだ。』



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