手話で会話するオランウータン・チャンテック (2/3)

『チンパンジーはしばしば類人猿たちの中で「最も賢い」との世評を持ち、オランウータンは愚鈍で怠惰だという世評を持つ。そのようなレッテルは不適切で、研究の結果に反している。』

話すチンパンジーのラナ (Lana) の育ての親、デュエイン・ランボー (Duane Rumbaugh) 博士がこうコメントするように、オランウータンのチャンテックもなかなか賢い…というか、こと言語能力については他のチンパンジーたちにひけをとりません。

リン・マイルズ博士が教えて始めて1ヶ月で最初の手話を覚え、最終的に150語になったボキャブラリーには、こんなものが含まれるそうです。
  • 人の名前 … リン、ジョンなど (Lyn, John)
  • 場所や地名 … 庭、ブロックホールなど (yard, brock-hall)
  • 食べ物 … ヨーグルト、チョコレートなど (yogurt, chocolate)
  • 行動 … 働く、だっこなど (work, hug)
  • 物 … ドライバー、お金など (screwdriver, money)
  • 動物 … 犬、類人猿など (dog, ape)
  • 色 … 赤、黒など (red, black)
  • 代名詞 … あなた、私など (you, me)
  • 位置 … 上、地点 (※2) など (up, point)
  • 形容詞 … 良い、怪我をしたなど (good, hurt)
  • 語勢 … もっと、する時間など (more, time-to-do)

手話を学ぶにしたがって教えたことのない手話の組み合わせや使い方をするようになり、彼の心の中で世界をどのように分類しているか理解することができるようになりました。たとえば、
  • 悪い 鳥 (bad bird) … 警戒の鳴き声を出すうるさい鳥
  • 白い チーズ 食べ物 (white cheese food-eat) … カッテージチーズ
  • 犬 (dog) … 犬、犬の絵、テレビのオランウータン、ラジオの犬の鳴き声、鳥、馬、サーカスのトラ、牛の群れ、チーターの絵、犬の鳴き声のようにうるさいヘリコプター
  • 虫 (bug) … コオロギ、ゴキブリ、ゴキブリの絵、カナブン、ナメクジ、小さな蛾、クモ、ミミズ、ハエ、蝶の形をしたグラフ、キャットフードのかけら、うんこのかけら

動物をまとめて犬と、小さな生き物をまとめて虫と呼んでいるような感じもしますが、漢字の成り立ちと比べてみると興味深いですね。「犭 (けものへん)」は犬と同じ字源で、猩々 (オランウータン)、豹 (チーターの仲間) にも使われています。虫はもともとマムシの象形で、ナメクジ (蛞蝓) やミミズ (蚯蚓) にも使われています。甲骨文字を生み出した太古の人たちにも近い感受性なのじゃないかという気がしてきます。

また、新しい手話を作り出すこともあったようで、たとえば:
  • 歯なし (no-teeth) … 遊ぶときに噛みつかないよという意味で
  • 目の飲み物 (eye drink) … 研究員の使うコンタクトレンズの溶液を見て
  • 指なしデイブ (dave-missing-finger) … チャンテックの好きな大学職員で手を負傷していた

最後はあだ名のような気もしますが、チャンテックは同じ檻で暮らすあまり好きではないオランウータンのシブ (Sibu) に対して、「オレンジの犬 (Orange dog)」などとあだ名をつけたりもしていたそうです。

ココちゃんのように死生観について語っていたかは分かりませんが、死んだ鳥を見て「悪い (bad)」と手話をしたそうです。他に猫を捕まえる前や、ダイコンをかじる前にも「悪い」と手話していたようで、心やさしいところはココちゃんと変わりません!

また、ココちゃんのように嘘もついていたようで、比較的幼い頃から週3回くらいのペースで嘘をついていたそうです。たとえば「汚物 (dirty)」という口実でトイレにつれていってもらってドライヤーや石鹸で遊んだり、手をひっぱって気をそらしたすきにポケットの食べ物を盗んだりしたそうです。…まさに嘘つきは泥棒の始まり…!

ユーモアのセンスもあったようで、たとえば消しゴムを盗んで飲み込むふりをして口をあけて見せ、「食べ物 食べた (food eat)」と周囲の人を驚かせたりしていました。実際は消しゴムは口の頬の隠されていて、後でチャンテックの寝床の隠し場所から見つかったりしていたそうです。

しかし、嘘やジョークというと例の批判が気になってくるわけですが…それについてのマイルズ博士の言葉です。

『われわれは、チャンテックの手話は自発的で、反復的ではないということを調べた。手話の訓練をされたチンパンジーのニムと違い、彼は話し相手を真似ることはほとんどなかった。むしろ、チャンテックはコミュニケーションを始めるため、そして彼の必要を満たすために、活発に手話を使った。』

かなり意識はしているようですね…!

次は言葉以外のチャンテックの人となりについてです!


この記事へのコメント
  1. お名前: ななしのゴリラさん 投稿日:2014年10月13日 00:02
  2. 天才ですね。いいな…
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