チンパンジーから言葉を学んだチンパンジー・ルーリス (2/3)

手話をするチンパンジーの真似をして手話を覚えるチンパンジーの例は観察されていたものの、チンパンジーが子供に手話を教えるのか、子供は教わって手話を使えるようになるのかについては不明でした。「プロジェクト・ルーリス」はそれを解明するのが目的でした。

周囲の人間から学ぶことのないよう、ルーリスがいるところでは「誰、何、どこ、どれ、欲しい、手話、名前 (WHO, WHAT, WHERE, WHICH, WANT, SIGN, NAME)」の7つの手話と口頭での英語、そしてジェスチャーのみを使うことが許されました。もし誤ってルーリスの前で他の手話をした場合は記録されましたが、5年3ヶ月のプロジェクトの期間中、そういった事例は40未満だったそうです。

そして、ルーリスが手話をしていることが別個に3人の観察者によって正しく使用されていると確認されるまでは、ルーリスが覚えたとは認められませんでした。そんな中でルーリスが最初に覚えた手話、それは人名だったそうです!

ワショーの記事でもお話したエサ係 (※1) を呼ぶときの、頭の上で手を叩く、後に「人 (PERSON)」の手話になった仕草です。ルーリスはワショーと出会って8日目にこれを覚えました。ワショーの真似をして覚えたそうですが、やっぱり食べ物がからむと早いですね…!

同じく、わりと早い段階で覚えたのが「おいで (COME)」で、これはなんとワショーが自ら教えたのだそうです!

最初の3日間、ワショーは一緒のときにルーリスを振り返って「おいで」と手話し、近づいて手をひっぱって連れてきたそうです。次の5日間は「おいで」と手話して、今度はルーリスに近づくだけ。8日目以降からは「おいで」の後に近づくことはせず、ルーリスが来るのを待つようになったそうです。こうして、ルーリスは「おいで」を学びました。

他にもワショーはお手本を見せてさまざまな手話を教え、たとえば「ブラシ (BRUSH)」と手話をしてヘアブラシでルーリスをブラッシングし、小さなプラスチックの椅子を持ってきて「椅子 / 座る (CHAIR / SIT)」と手話して見せました。

また、手をとって手話の形を教えることもあったようです。たとえば、人間からキャンディーをもらうのを待つ間、ワショーはずっと「食べ物 (FOOD)」と手話をしていましたが、ルーリスはただそれを見ているだけでした。それに気づいたワショーは、手話をやめてルーリスの手を「食べ物」の形にして動かしたそうです。

同じように、人間からガムをもらう際にはルーリスの頬で「ガム」と手話をしていたそうです (※2)。どちらも「ルーリスにもあげて!」というワショーの親心というかやさしさが感じられて、大好きなエピソードです!

こういったワショーの教育の甲斐もあって、15ヶ月目には2語の手話の組み合わせ、「急いで ちょうだい (HURRY GIMME)」「人 おいで (PERSON COME)」などができるようになりました。そして29ヶ月目には1763ヶ月で475年3ヶ月で51の手話の単語を覚えました。1987年10月の時点ではボキャブラリーは70になっていたそうです。

手話以外の面でも、ワショーからさまざまな文化的行動も学びました。たとえばワショーは寝るときには毛布をぐるぐる巻きにし、回りにお気に入りのおもちゃやものを並べた巣を作り、毛布の上またはくるまって寝ていました。ルーリスは最初はそれを見ているだけでしたが、だんだんとおもちゃを手渡ししてお手伝いをするようになり、最終的には自分でも同じような巣を作って寝るようになったそうです。

プロジェクトは5年3ヶ月で、人間がルーリスだけに話しかけないというある意味仲間はずれにしてしまう側面もあるため、終了となりました。残念ながら資金不足もあり、人手不足で観察は1日4時間しかできず、十分に研究できたとは言えなかったようです。

※1 ちなみに、名前はジョージ・キンボール (George Kimball) さんなんですけど、どうでもいいですよね。手話だと彼が見ていないときには気づかれないので、手を叩いて音を出すようになったのだそうです。
※2 ちなみに、頬に当てた二本指を曲げながら手を上下に動かすような感じです (Sign for GUM | ASL Sign Language Video Dictionary) 。



この記事へのコメント
まだコメントはありません。
コメントを書く
お名前:

コメント:

ご案内
最近の記事
最近のコメント
カテゴリ
タグクラウド
過去ログ

ブログランキング・にほんブログ村へ
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。